暮らしを整える、長い話

整える人(40代)さんの歩き方

数年前、私の暮らしはぐちゃぐちゃでした。仕事が忙しくて、家には寝に帰るだけ。食事はコンビニ、部屋は散らかり放題、休日は昼過ぎまで寝て、夜になると月曜日が来るのが憂うつで眠れない。そんな毎日でした。

きっかけは、ある冬の朝、熱を出して一人で寝込んだことでした。冷蔵庫には飲み物すらなくて、薬もない。這うようにしてコンビニに行ったとき、レジの店員さんに「大丈夫ですか」と声をかけられて、なぜか泣きそうになりました。

回復してから、少しずつ暮らしを整えることにしました。大きなことはできないので、小さなことから。まず、冷蔵庫にいつも水とゼリーとレトルトのおかゆを入れておくことにしました。それから、救急箱を用意しました。それだけでも、何かあったときの不安が少し減りました。

次に、部屋の片付けです。一気に片付けるのは無理なので、一日十五分だけと決めました。タイマーをかけて、鳴ったらやめる。最初の一か月は、片付けた端からまた散らかっていきました。でも、二か月、三か月と続けるうちに、少しずつ床が見えるようになりました。

食事も変えました。毎日自炊は無理なので、週末にご飯をまとめて炊いて冷凍しておく。みそ汁だけは毎晩作る。おかずはスーパーのお惣菜でもいい。それだけで、コンビニに行く回数がぐっと減りました。

睡眠も見直しました。寝る一時間前にはスマホを置いて、白湯を飲んで、本を数ページ読む。最初はなかなか眠れませんでしたが、続けるうちに、自然と眠くなる時間が早くなっていきました。

一年ほどたったころ、ふと気づくと、月曜日の憂うつがだいぶ軽くなっていました。仕事が楽になったわけではありません。でも、帰る家が整っていると、外でどんなことがあっても、家に戻れば少し回復できる。それが、こんなに大きなことだとは思っていませんでした。

今も、完璧な暮らしではありません。忙しい時期は部屋が散らかるし、疲れた日はお惣菜とビールで済ませることもあります。でも、崩れても、また整えればいい。整え方を知っている、ということが、私の暮らしの支えになっています。

あの冬の朝、コンビニの店員さんの「大丈夫ですか」がなかったら、私は今もぐちゃぐちゃの暮らしを続けていたかもしれません。あの人は覚えていないと思いますが、私にとっては、暮らしを変えるきっかけをくれた一言でした。

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